2021.09.28有機農業もキーワードに 2050年の日本の農業ビジョン「みどりの食料システム戦略」
こんにちは。有機農業者支援事務局です。
2021年5月、これからの日本の農業をどうしていくかについて、2050年を見据えた中・長期的なビジョン「みどりの食料システム戦略」が発表されました。農業に携わる方であれば一度はこの名前耳にしたことがあるのではないでしょうか。その中では有機農業にも触れられており、その中身について簡単に紹介していきます。
「みどりの食料システム戦略」とは?
戦略の趣旨について
農水省のWEBページでは以下のように解説されています。
我が国の食料・農林水産業は、大規模自然災害・地球温暖化、生産者の減少等の生産基盤の脆弱化・地域コミュニティの衰退、新型コロナを契機とした生産・消費の変化などの政策課題に直面しており、将来にわたって食料の安定供給を図るためには、災害や温暖化に強く、生産者の減少やポストコロナも見据えた農林水産行政を推進していく必要があります。 このような中、健康な食生活や持続的な生産・消費の活発化やESG投資市場の拡大に加え、諸外国でも環境や健康に関する戦略を策定するなどの動きが見られます。今後、このようなSDGsや環境を重視する国内外の動きが加速していくと見込まれる中、我が国の食料・農林水産業においてもこれらに的確に対応し、持続可能な食料システムを構築することが急務となっています。 このため、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。
つまり、気候変動対策・担い手不足対策・ポストコロナ対策の視点を盛り込みながら農林水産業全体の生産力を、持続可能性と矛盾することなく高めていくための戦略と言えます。
さらに国内情勢として健康な食生活や持続的な生産と消費・ESG投資市場、国際情勢として国際ルールメーキングへの参画、対応等も意識し策定していることが伺えます。
※ESGとは
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉。詳しくはコチラ
2050年までに目指す姿
この戦略の特徴として、2030年~2050年にかけての中・長期の具体的な数値目標が掲げられていることがあります。
その内容は以下の通りです。
- 農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現
- 化学農薬の使用量をリスク換算で50%低減
- 化学肥料の使用量を30%低減
- 耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万haに拡大
- 2030年までに持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現
- エリートツリー等を林業用苗木の9割以上に拡大
- ニホンウナギ、クロマグロ等の養殖において人工種苗比率100%を実現 等
農林水産省「みどりの食料システム戦略について(説明資料)」より
その中では、環境保全の分野から有機農業についても言及されています。
農林水産省「みどりの食料システム戦略について(説明資料)」より
ここでは有機農業について「2040 年までに、主要な品目について農業者の多くが取り組むことができるよう、次世代有機農業に関する技術を確立する」・「2050 年までに、オーガニック市場を拡大しつつ、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を 25%(100 万 ha)に拡大することを目指す」ことが掲げられています。
目標達成に向けた工程表
目標達成へ向けて本戦略の工程表では、「2030年 までに有機農業の面積を63,000ha」、「2040年までに次世代有機農業技術の確立」とされており、2020年から段階的に新たな技術革新(10年ごとに計10個)を加えていき、先程の目標を達成する内容になっています。
これらの技術革新は、有機農業のみならず慣行農業の維持拡大にも期待ができるでしょう。
農林水産省「みどりの食料システム戦略について(説明資料)」より
農林水産省「みどりの食料システム戦略について(説明資料)」より
有機農業の将来
先日開催された東京2020でも有機食品が提供され、最近では、市民レベルでの”環境意識”が高まっており、今後有機食品の消費が拡大する余地は大きいと言えるでしょう。海外に目を向けるとでは有機食品の市場は年々拡大しつつあり、日本産の有機茶・有機醤油などの需要もあることから、国内市場のみならず輸出の面でも伸びていくことが想定されます。
また、以前は難しかった安定的な生産についても、有機農業関係者の努力により、有機栽培技術の確立が進み、大規模に有機農業へ取り組む法人・経営の一部を有機に転換する農家が出てきています。さらに新規参入者の2~3割は有機農業に関心があり、有機農業への取り組み割合の高い自治体も存在しています。
一方、消費者が容易に有機食品を入手できるよう、国産の有機食品の消費拡大、輸出を含めた販売機会の多様化、有機JAS表示への認知度向上・理解促進を通し、消費者・地域に理解され支えられる環境づくりの方向性も示されています。
そのため、今回の戦略の中に組み込まれている項目には、補助金や支援政策が組み込まれていくことが想定され、今後ますます有機農業を取り組みやすい環境が整備されていくでしょう。
今後の農業経営の1つの選択肢として有機JAS認証の取得を考えてみてはいかがでしょうか?
農林水産省「みどりの食料システム戦略について(説明資料)」より
農林水産省「みどりの食料システム戦略について(説明資料)」より
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