2020.07.20有機JAS認証制度とは?認証取得のステップ
最近は「オーガニック」「有機野菜」などの表示がされた農産物をスーパーなどで目にすることが増えてきました。TOKYO2020の食材調達基準に有機JAS食品の利用が推奨されたことからも国内での需要はますます伸びてくるでしょう。
そもそも、「オーガニック○○」「有機○○」という名称で農産物を販売するためには、ある一定の基準をクリアして有機JAS認証を受ける必要があります。
今回は、有機JAS規格の4つの対象カテゴリー
① 有機農産物
② 有機加工食品
③ 有機畜産物
④ 有機飼料
のうち、①有機農産物についてのお話です。
有機JAS認証制度とは?
まずは、制度の概要についてみていきましょう。
農水省WEBページでは、下記のような説明となっています。
JAS法*に基づき、「有機JAS規格」に適合した生産が行われていることを第三者機関が検査し、認証された事業者に「有機JASマーク」の使用を認める制度。 農産物及び農産物加工食品は、有機JASマークが付されたものでなければ、「有機○○」と表示できない。
つまり、有機JAS認証制度とはJAS法に基づく有機食品の認証制度のこと。
もっと簡単に言うと、 国の定める有機JAS規格に適合した方法で生産されている農産物
=有機・オーガニック農産物
となります。
なぜこのような制度があるのでしょうか?
日本国内の有機農産物の表示については、1992年(平成4)に表示ガイドラインが制定されています。最近になって有機農産物の消費者理解も高まってきていますが、当時は強制力をもたなかったため、「有機」や「減農薬」などの紛らわしい表示の農産物が市場に出回っていました。オーガニックの農産物だと思って購入したら、実は農薬も化学肥料も使われていた、なんてことがあったわけです。
そのため、2000年(平成12)に施行された改正JAS法に基づき、有機農産物やその加工食品に関する日本農林規格(有機JAS規格)が制定され、さらに、2005年には有機畜産物と有機飼料に関する有機JAS規格が加えられました。
これらの規格は、コーデックス委員会*によるガイドラインに準拠するもので、アメリカやヨーロッパなどの諸外国と共通した制度です。
- *コーデックス委員会
- コーデックス基準やコーデックス規約とよばれる食品の国際基準(General Standard for Contaminants and Toxins in Food and Feed)をつくる政府間組織。国際間の食品取引が増大するなか、国ごとで異なる食品に関する規制や規約を標準化し、食品の安全で公正な貿易を促すため、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が、1963年に共同で設立した。
どんな農産物なら有機JAS認証を受けられる?
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有機JAS認証を取得できるか/肥料・農薬などの資材について
有機JAS認証は、農林水産大臣が定めた品質基準や表示基準に合格した農産物が認定されます。
有機栽培で農業生産を行っている場合でも、栽培時に「有機JAS規格で認められていない肥料・農薬などの資材」を使用していると、認証を受けられません。
有機JAS制度で使用可能な肥料・農薬などの資材については、農林水産省で詳細まで規定されているので、それを参考に使用可能なものに変更する必要があります。
- *肥料、農薬などの資材に関する情報(資材の適合性判断基準及び手順書等)
- https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/index.html
有機JAS認証を取得できるか/生産ほ場について
農業生産を行う「ほ場」についても基準が定められています。
例
- 栽培を開始する2年以上前からほ場に禁止された農薬・化学肥料を使用していないこと
- 栽培中も禁止された農薬・化学肥料を使用していないこと
- ほ場や施設・用具に農薬や化学肥料などの使用禁止資材の飛散・混入がないこと
など
有機JAS認証を取得できるか/種苗について
もちろん、使用する種苗についても基準が定められています。
(例)
- 遺伝子組み換えの種苗を使わないこと
- 種子を購入する場合、あらかじめ農薬等で処理された種子は、それしか入手できない場合には使用することができることとする
- 育苗する場合の培養土は、基準に適合したほ場の土壌であるか/購入する場合には使用禁止資材が使われていない培養土であるか
など
これらをどうやって証明するのか。
照明のためには、栽培記録や資材の購入履歴をしっかりと管理していくことが不可欠です。
有機JAS認証のステップ
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ここまで、堅苦しい内容をお伝えしてきましたが、有機JAS認証取得のステップは案外シンプルです。
1. 講習会への参加
まずは登録認定機関などが実施している講習会に参加して、有機JASのしくみについて理解を深めます。
有機JAS認証を申請する場合にはこの講習会への参加が必須になります。
2. 有機JASの基準を満たしているかどうか確認
講習会を受講し、有機JAS取得への意欲が高まったら、申請前に自分の農場が有機JAS認証の条件を満たしているかどうか確認します。
- 申請するほ場は2年以上(茶や果樹など多年生は2年)有機的管理(有機JAS法で禁止されている農薬や化学肥料を使 用していない)が行われているか。
※尚、有機的管理が1年以上で転換期間中有機農産物として出荷が可能です。 - 栽培記録が作業日誌等で記録されているか。
- ほ場が周辺の田畑と明確に区分されているか。一定以上の距離が離れているか。
- 従業員が生産工程管理責任者、格付担当者の資格を満たしているかどうか。 (講習会の受講が担当者の資格になります)
3. 登録認定機関へ申し込み、申請書の作成
登録認定機関から有機JAS認証に必要な申請書を取り寄せます。
申請書を書くにあたって、生産工程管理者や格付担当者を誰が行うか決定しておく必要があります。
登録認定機関に作成した申請書を送り、受理されると申請完了となります。書類に不備がある場合、書類についての是正措置が要求されることもあります。
認証費用については、登録認定機関によって検査にかかる費用が異なります。料金規定は事前に登録認定機関のホームページなどで確認しておく必要があります。
→認定新規就農者の方が利用可能な補助金について
→認証費用について
4. ほ場実地検査を受ける
申請書が通過すると、いよいよ農場での実地検査です。検査日について事前に打ち合わせの連絡がきます。 検査は主に下記の方法で行います。
- 申請者・生産工程管理者・格付担当者への聞き取り確認
- ほ場や施設の実地確認
- 作業日誌や出荷記録、購入伝票などの書類の確認
この方法によって、有機JAS規格に基づいた栽培方法が行われているか検査が行われます。
5. 判定委員会による審査
検査した検査員の報告書に基づき、登録認定機関において判定委員会(認定の審査)が行われます。場合によっては書類の再提出や改善指摘事項を受け、改善を求められることになります。
6. 有機JASの格付および出荷開始
判定委員会によって認定が決定したのち、認定書が送られてきます。
これによって「有機JAS認定取得」となり、農産物や加工食品にJASマークを貼付して出荷することができるようになります。
2年目以降認定を継続する場合は、再度申請書を提出し、この審査手順と同様に進めることになります。認定を継続するには年に1回検査を受ける必要があります。
まとめ
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有機JAS認証制度とは?
・JAS法に基づく有機食品の認証制度のこと
・国の定める有機JAS規格に適合した方法で生産されている農産物=有機・オーガニック農産物と表示することができる
どんな農産物なら有機JAS認証を受けられる?
- 農林水産大臣が定めた品質基準や表示基準に合格した農産物であること
- 使用できる肥料、農薬等の資材にはルールがある
- 栽培記録や資材の購入履歴を記録して管理をしていく必要がある
有機JAS認証のステップ
- 講習会への参加
- 有機JASの基準を満たしているかどうか確認
- 登録認定機関へ申し込み、申請書の作成
- ほ場実地検査を受ける
- 判定委員会による審査
- 有機JASの格付および出荷開始
現在有機栽培を行っている、または一部ほ場を有機栽培に切り換える予定の農業者の方で有機JAS認証の取得を検討されている場合、まずは認証機関の講習会に参加することが最初の一歩となります。
今後も有機JAS認証取得に役立つコラムを随時掲載していきます。